方向音痴
きょう街中で若い男性が「みなみはどちらですか?」と訊いてきた。
一瞬ミナミの事かと思ったが状況から方角だと知る。
よくぞ私に訊いて下さった。
ショップや建物名の知識は偏っているが東西南北は大丈夫。地下街は少々難しいが、私は方角に強い。
もっとも陽がある時刻だったから「考えろよ」と言いたいところだったが。
女性の知人に方向音痴が多いのは何故だろう。
まず自宅周りの地図が書けない。地図を渡すと地図を持ってグルグル回す。地面と地図の方向が合っていないと目的地が定まらないらしい。
私の頭の中の地図は常に北が上だ。書く地図も当然北が上。駅や街角の案内図は地図の面側を上に書いてある事が多いが私はこれに困惑する。必ず北を確認して歩き出す。
カーナビも北ではなく目的地が上だ。困ったものだが慣れてきた。
私の母はデパートの中で迷子になる人で、私は幼い頃から案内役だった。必要性と依存度の問題だな、小さい頃から思っていた。私は一人で何処にでも行く。母は同行者が必要な人だ。
知人の娘が3歳だった頃の事だ。遊びに来た神戸で街の絵地図を与えられた。彼女にとってそれは初めての地図ではなかったか。寡黙な彼女だったが歩いたルートと自分の位置を地図上で正確に理解していた。知人は依存度の高い人だったから3歳の彼女には必要な事だったのかも知れない。
それにしても地図の概念を3歳で理解できるのか、と舌を巻いた。
凡人の私が地図を初めて見たのは何時だったのだろうと考えてみた。小学校に提出する為に母が描く学校と自宅を結ぶ地図ではなかったか。私ならこう描く、と不満を持って見ていた記憶がある。