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June 24, 2005

エレニの旅

アンゲロプロス作品を劇場で観るのは久しぶり。
1919年にオデッサを追われ、テサロニキ近くにたどり着いたギリシャ難民の話。

黒い装いのグループがたたずむイントロは監督の30年前の初期作品を思い出させる、焼き直しか?
違った。

孤児の少女がその時代をどう生きたかを淡々と、やや象徴的に描いている。
河、雨、海、洪水と湿っぽい舞台。重い。

劇場のバルコニーで生活する人々、筏と小船の葬列の黒い旗、吊るされた羊、水没した村、海辺の白い布、と印象的なシーンが多い。
どこかで見た家がある。「同じ場所でロケしたのか、どの作品で観たのか」と、気になって集中できないので困る。

難民問題は現在進行形だ。戦禍や弾圧で多くの人が生まれ育った土地を離れる。
黒海付近の人々の移動の歴史を思えば島国日本は留まり続けているように見えるだろう。
現在のギリシャ人は神話時代の民族とは異なると教わったが複雑すぎて理解不能。

そもそも人の起源がひとつなら純民族なんて幻想ではないのか。教えて欲しい。

懐かしい曲が使われていた。「ぐみの木」。
♪ほそき枝を君によせて日ごとささやく若葉のこえ♪

これはロシア民謡だと思っていたがどうなのだろう。
私は子供の頃の4年間を北海道で暮らしてロシア民謡を思いっきり刷り込まれている。
歌詞なんかスラスラ出ちゃう。
近頃日常の健忘症状とはえらい違い。

ドラムが良かった。
焚き火の廻りをイコンを掲げた女達がドラムに合わせてステップを踏む。
ちょっと聴き覚えの無いリズム。

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June 23, 2005

バットマン ビギンズ

今回のバットマンが一番好き。

正義って人によって違うのですよ、ね、ブッシュさん。

「メメント」の監督と聞いて納得、只者じゃない。
絵が綺麗で、科白が洒落ていて、脇のキャストも名優揃い。
リーアム・ニーソンも「スターウォーズ」じゃなくてこちらに出てくれて嬉しいよ、私は。

一番怖かったのは最後のモノレールが落ちてぶつかるシーン。
先日のJRの事故と重なって、体が硬直してしまった。

ところでほぼ満席の両隣が携帯のディスプレーを始終チェックするのでイラついた。明りが視野に入るのだ。
家でビデオでも見てろ、と言いたい。

バットマンは良かったけれど、ファン層は苦手。


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June 16, 2005

オペレッタ狸御殿

つい先日オダギリジョーの舞台挨拶を見に行けず歯噛みしていたのに今週で終わると聞いて慌てた。

鈴木清順さん、お久しぶり!
出演者も衣装も綺麗ですね~、背景も曲も綺麗。
一番好きなのは衣装の色、皆さん良く似合ってました。

チャン・ツィイーが時代劇?と、ちょい心配したがさすがの国際スター、違和感無し、上手い。もっと上手いのは平幹、決まり過ぎ。ジョーさん華はあるけどちょっと負けで私ちょっと悔しい。

日本画の上を舟が進み、能舞台で話が進み、海岸では影が長くなったり短くなったりで、楽しい。
音楽も盛り沢山でハワイアン・スパニッシュ・ラップも有り、でもブルースは無い。それで良し。

唯一気味が悪かったのが「美空ひばり」で、似てるような似てないような。彼女の歌もなんか変、寄せ集めみたい。何じゃコリャ~!

昔はミュージカルが嫌いだった。近頃は友人達にオペラ好きに改造されているので時々聴きに出掛ける。楽しいっす。

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June 15, 2005

タイトル変更

今までの自分のブログの記事を読み直してタイトルを変更することにした。「SATOの映画評」より「所感」の方が内容に近い。

でしょ!

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June 12, 2005

ベルリン、僕らの革命

贅沢な暮らしぶりの家に侵入し家具を無茶苦茶に置換えたりして金持ちを脅かすベルリンの若い二人組。
ひょんなことから一方の恋人が加わり、更にひょんなことから金持ちの一人を誘拐してしまう。

人の家に侵入するシーンで吐きそうになった。
気絶した金持ちを前にして3人がどうしたものかと頭を抱えるシーンでは私も絶体絶命のピンチを味わう。で、殺すな・殺すな・殺すな・殺すな・・・と、念じ続けた。

人を殺せば自分も死ぬのと同じだ。殺人の二乗。

結局山小屋で4人が共同生活を送りながら時間を稼ぐ。元闘士だったと言う金持ち親父とも少しずつ打ち解け、開放することでチャラにしようと言う事になるが裏切り者の親父はここでもまた裏切る。再犯度、高過ぎ。

三人の心優しい青年の其々の純情や醒めた眼に心打たれ、反省しない親父にげんなり。

ちょっと疲れる映画だった。

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やさしくキスをして

待っていました、ケン・ローチ作品。

舞台はグラスゴー、パキスタン移民2世のDJとアイルランド人の音楽教師が出逢って魅かれ合い、色々な障害を乗り越えるシンプルなストーリー。

20年前のスチーブン・フリアース作品「マイビューティフル・ランドレッド」もパキスタン移民2世が主人公だったが、こちらは政治やゲイの問題と盛り沢山で、しかもD.D.ルイスと主人公の絡みが綺麗で何度か観たものだ。

今回の障害はイスラムコミュニティとカソリック。

イスラムは体面が大事らしい、儒教と一緒。家族の絆が第一で子は親に従え、ってこれも一緒。優しいだけだった主人公は両親や姉妹を悲しませても自分の気持ちに忠実であろうと決意し家を出る。

驚いたのはカソリックの教区司祭が公立校教員の選定に口を出す事だ。無宗教の学校もあるらしいが公立校に宗教があるとは、英国って難しい。ゲイを忌諱し自殺者の埋葬を拒んだ歴史の残滓か。

音楽教師は生徒達にビリー・ホリデイの「奇妙な果実」を聴かせながらリンチで縊られた黒人達のスライドを見せる。「奇妙な果実」は本で読むだけでも強烈だが眼と耳に訴えた彼女のは主張は生徒達にどう受け止められたのだろう。

イスラム一家の姉は自分の結婚や家族の為と称して弟を騙し、妹は両親の反対を押し切って進路を自ら選び取ろうとする。コミュニティは常に少しずつ変化していく。

司祭は強権的でとんでもない人格で書かれている。制度としてある以上は起こりうる事だ。ローチはカソリックが嫌いなのかもと思ったが、コミュニティと違って制度は簡単に変革可能だからそこから考えようと言いたいのではないか。

SATOの両親は寛大であったと今は思えるが若い頃は悩んだものだ。ケストナーの「友は選べるが親は選べない」と言葉でやっと救われた気がした。

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June 04, 2005

ライフ・アクアティック

監督とキャストを見て楽しみにしていた。

芸達者が揃って観応え充分で嬉しいが、今回私はウイレム・デフォーに一票。今回のキャストにハズレ無し。凄い。

サラリーマンの私には自営業や芸術家、冒険家の生活が興味深い。ゲージツ家の友人達はお金も時間もたっぷり使って勉強したのにそのゲージツだけでは生活出来ず教員やバイトで凌いでいる。純ゲージツだけで食えるスーパースターは一握り。

今回は海洋探検家の話。冒険の為の資金集めに四苦八苦する主人公。成果を見せないと資金が集まらないのはいずこも同じ。

その昔、お金持ちと庶民がくっきり分かれていた頃はお金持ちパトロンは結構居たものだ。きょう日の成金お金持ちはパトロンにならない。企業は不況で喘ぎメセナどころではない。庶民は中流に成長したけれど現実的なものにしかお金を使わない。

CGの希代な生物やチープな潜水艦はリアルじゃないが、鮫に食われたり海賊と撃合ったりで人がバンバン死んでいくのはとてもリアル。海賊に殺されてしまったライバル隊員達のずらり並んだ墓(海賊が弔った?)がブラック。主人公の息子(?)まで整備不良のヘリコプター事故であっさり死んでしまう。その息子(?)は水葬で送られた。羨ましい。

笑うつもりで観にいったが何かシビアな事考えさせられた。

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