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June 12, 2005

やさしくキスをして

待っていました、ケン・ローチ作品。

舞台はグラスゴー、パキスタン移民2世のDJとアイルランド人の音楽教師が出逢って魅かれ合い、色々な障害を乗り越えるシンプルなストーリー。

20年前のスチーブン・フリアース作品「マイビューティフル・ランドレッド」もパキスタン移民2世が主人公だったが、こちらは政治やゲイの問題と盛り沢山で、しかもD.D.ルイスと主人公の絡みが綺麗で何度か観たものだ。

今回の障害はイスラムコミュニティとカソリック。

イスラムは体面が大事らしい、儒教と一緒。家族の絆が第一で子は親に従え、ってこれも一緒。優しいだけだった主人公は両親や姉妹を悲しませても自分の気持ちに忠実であろうと決意し家を出る。

驚いたのはカソリックの教区司祭が公立校教員の選定に口を出す事だ。無宗教の学校もあるらしいが公立校に宗教があるとは、英国って難しい。ゲイを忌諱し自殺者の埋葬を拒んだ歴史の残滓か。

音楽教師は生徒達にビリー・ホリデイの「奇妙な果実」を聴かせながらリンチで縊られた黒人達のスライドを見せる。「奇妙な果実」は本で読むだけでも強烈だが眼と耳に訴えた彼女のは主張は生徒達にどう受け止められたのだろう。

イスラム一家の姉は自分の結婚や家族の為と称して弟を騙し、妹は両親の反対を押し切って進路を自ら選び取ろうとする。コミュニティは常に少しずつ変化していく。

司祭は強権的でとんでもない人格で書かれている。制度としてある以上は起こりうる事だ。ローチはカソリックが嫌いなのかもと思ったが、コミュニティと違って制度は簡単に変革可能だからそこから考えようと言いたいのではないか。

SATOの両親は寛大であったと今は思えるが若い頃は悩んだものだ。ケストナーの「友は選べるが親は選べない」と言葉でやっと救われた気がした。

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